第 19 节
作者:
团团 更新:2024-05-25 15:10 字数:4815
「くわしいな。君は時計屋の息子《むすこ》だったかな」
「いや、私の叔父《おじ》が時計をあつかっているので……」
刑事は半《なか》ば無意識のように、竜頭に指をかけて、ねじをまいていたが、ほんのちょっとまわしただけで止めてしまった。
「ほとんど一杯《いつぱい》にまかれていますね……これで自動巻き装置《そうち》になっていれば文句のないところですが、現在の技術では、日付のカレンダⅴⅴ椹‘ム、自動巻きの三つの機構のうち、二つしか組みこむことが出来ないそうです」
刑事はそれからかるい苦笑を浮《う》かべた。
「これは失礼。時計の受け売りの講釈をしている場合ではありませんね。ショックで時計が止まっていて、犯行時刻を正確に示しているというような場合ならばともかく……」
「機械は非情なものだからな。持ち主が死んでも正確に時を刻んでいるよ」
警部もちょっと感傷的なせりふを吐《は》いたが、すぐわれに帰ったように、
「とにかく、ここの住人たちを尋問《じんもん》して見よう。応接間かどこか、あいている部屋《へや》はあるんだろう」
といいながら、現場を出た。
母屋《おもや》の応接室へ入ると、警官がまず四十ぐらいの眼《め》の鋭《するど》い男をつれてやって来た。
被害者《ひがいしや》の従弟《いとこ》で、村越和男といい、大賀商事の枺┲У辘未伍Lをしているということだった。
この家は、十年ほど前、大賀耕治がほとんど捨て値で手に入れたらしい。もちろん、商売がら、毎月|神戸《こうべ》の本社と枺─伍gを、数往復するというのだから、神戸に本宅、枺─藙e宅という生活もおかしくはないが、そこにいわゆる枺━铳ぅ栅坤堡扦悉胜⒒嵘绀碎v係のある人間をごちゃごちゃつめこんでいるところが、関西商人らしいがめつさだろう。
神戸の本宅のほうには、園枝《そのえ》という正夫人と、三人の子供がいるらしいが、さっそく飛行機で上京して来るということだし、そちらの眨麞摔厢幛蓼铯筏摔筏皮猡瑜い染郡峡激à俊?br />
現在ここに住んでいる女は、光村|珠代《たまよ》という映画のニュ骏榨З‘スらしい。彼が相手にして、ここに住まわせている女は、平均二年ぐらいの寿命《じゆみよう》しか持たないというのだが、この女がこの家へ入って来てから、一年七か月になるというのだから、そろそろ倦怠期《けんたいき》にさしかかったころかも知れなかった。
「それで、その光村さんはどこにおられるのですか?」
警部の伲鼏枻恕⑾嗍证厦肌钉蓼妗筏颏窑饯幛啤?br />
「昨夜九時ごろ、横浜にいるお母さんが危篤《きとく》だという電報があって、急いでとび出して行ったのです。これが奥《おく》さんのお母さんなら、社長も当然いっしょに出かけたところでしょうが、そこは何しろ愛人ですからね」
と、日ごろの胸のつかえを吐《は》き出すような口眨扦い盲俊?br />
3
広い家には摺钉沥筏い胜いⅳ郡筏摔长渭窑想j居房《ざつきよぼう》のような感じだった。
母屋《おもや》に住んでいるのは、村越和男とその妻の芳子《よしこ》だが、この女は胸をわずらって、三か月ほど前から入院中だということだった。それから、被害者《ひがいしや》の伯父《おじ》の松崎|武則《たけのり》、会社の仕事にはタッチしていないのだが、個人的な投資の切りまわしをしているらしい。それに、神戸から同行して来た秘書の貝森|憲一《けんいち》、書生として住みこんでいる藤代|勇《いさむ》というW大学の学生、石原利江と近藤みどりという二人の女中――これが昨夜、この家にいあわせた人々だった。
現場の状況《じようきよう》や、犯行推定時刻などをにらみあわせて、外部から犯人が侵入《しんにゆう》したということはまず考えられなかった。
加瀬警部は、いちおう容疑者をこの六人の線に絞《しぼ》って、取り眨伽蜻Mめて行った。
被害者《ひがいしや》と、最後に顔をあわせたのは――という伲鼏枻恕⒋逶胶湍肖悉长Υ黏à俊?br />
「珠代《たまよ》さんが出かけてすぐ、私はちょっと離《はな》れへ顔を出して見ました。社長は気がぬけたように、ウィスキ胜嗓蝻嫟螭扦い蓼筏郡ⅳⅳ蓼晷呐浃筏皮い毪瑜Δ蕵斪婴猡胜?br />
――まあ、今夜はゆっくり休養しろという天命なんだろうから、そろそろ寝《ね》るとするか、
などといっておりましたから、私もウィスキ蛞槐喟椤钉筏瑜Δ肖蟆筏筏郡坤堡扦窑陇辘蓼筏俊J畷rちょっと前のことでしたが……」
村越和男の尋問《じんもん》が、こんなふうにして終わりかけたとき、廊下《ろうか》の外がさわがしくなった。そして、警官の制止をふり切るようにして、花模様のワンピ工蜃扭恳蝗摔韦铯づ趣婴长螭抢搐俊?br />
「あの人が……あの人が殺されたんですって……罠《わな》、罠だったのです!」
血相をかえ、うわごとのような言葉をもらすと、ハンカチを眼にあてて、激《はげ》しくしゃくりあげた。
「光村珠代さんですね。罠――とは、いったいどういう意味なのです?」
警部が鋭《するど》くたずねると、
「あの電報はにせものだったんです……家へ帰って見たら、母はなんともなくて……変だなとは思ったんですが、誰《だれ》かのたちの悪い悪戯《いたずら》だろうと考えて、そのまま昨夜はむこうに泊まってしまったんです……わたしをさそい出して、パパを殺そうとした、犯人のたくらみに摺钉沥筏いⅳ辘蓼护螅 ?br />
珠代はヒステリックにしゃべりまくったが、これは警部にはそれほど意外なことではなかった。犯行が計画的なものだとすれば、犯人がこの程度のトリックを仕掛《しか》けることは、むしろ当然といってよいのである。
「それでお出かけになったのは?」
「九時二十分ごろのことでした。わたくしもあまりあわてて、時計を忘れたくらいですから、正確な時間はわかりませんが……」
裏の秘密はともかくとして、直接手を下した犯人としては、この女は除外していいだろうと、警部は思った。それからも、あれこれと、伲鼏枻蚓Aけて見たのだが、珠代は大げさと思われるくらいの愁嘆《しゆうたん》を続けるだけだった。
4
松崎武則は六十三ということだったが、体格はたくましく、皮膚《ひふ》もまだつやつやしていた。だが口眨悉い摔饫先摔椁筏?br />
「私もむかしは兜町《かぶとちよう》と蠣殻町《かきがらちよう》で大相場をはって、松崎将軍とまで呼ばれた男です。耕治を世話してやったのもそのころですが、昭和十五年を境として、その後は、すべて事志と摺钉沥筏い蓼筏皮省韦颏浃盲皮猡Δ蓼肖骸ⅳⅳ伽长伽烁韦问涝挙摔胜毪瑜Δ摔胜盲皮筏蓼い蓼筏郡い蕖⒏韦怂坤胜欷皮稀ⅳ长欷橄趣猡嗓Δ胜毪浃椤?br />
などと、溜息《ためいき》まじりのくりごとを、くだくだならべたてるのだった。まだ体のほうが、完全に老いこんでいないだけに、こうして居候《いそうろう》のような身分になり下がった自分が情なくてたまらないのだろう。
「それで、耕治さんと最後におあいになったのは?」
「あれは十一時ちょっと前だったと思います。友達のお通夜から帰って来て、株のことでどうしても話しておきたいことがあったので、まだ起きているかな――と思いながら、離《はな》れをのぞいて見ました。もちろん、彼女がいたら、私も遠懀А钉à螭辘琛筏筏郡扦筏绀Δⅳ謥护い寺劋い郡槌訾堡郡趣いΔ韦恰?br />
「なるほど、それで?」
「行ってみたら、耕治はもうベッドに入ってぐ癌‘いびきをかいていました。起こすほど急ぐことでもないので、私も引き返して寝《ね》てしまいましたが」
「その時、べつに異状はなかったのですね」
「もちろんです。なにしろ、あの部屋《へや》は冷房《れいぼう》ですから、真夏でも、窓は密椋Г筏皮い蓼工贰?br />
「それから、老人の方――と申しては失礼ですが、一般《いつぱん》的に年をとると、耳ざとくなるという話ですね。夜中に――というよりも、明け方近く、何か妙《みよう》な物音でもお聞きになりませんでしたか?」
「さあ……いっこうに……あの離《はな》れでの物音は、よほど大きなものでないと、母屋《おもや》までは聞こえないと思いますよ」
結局、彼の証言からも大して得るところはなかったのである。次に呼ばれたのは、秘書の貝森憲一だった。三十二で、学生時代には柔道《じゆうどう》の選手をしていたということだが、いかにもスポ膜清憽钉俊筏à郡瑜Δ侍甯瘠坤盲俊?br />
「珠代さんが出かけられて間もなく、神戸から長距離《ちようきより》電話がありまして、かなり重要な問睿蛑椁护评搐郡韦扦埂I玳Lがおひとりなことはわかっておりましたから、すぐ離れへお知らせに参りましたが、そのとき、おあいしたのが最後になったのです」
憲一は、沈痛《ちんつう》な表情を浮《う》かべながら、要領よく答えた。
「それは何時ごろでした?」
「十時ちょっと前だったと思います」
「その時、大賀さんはお一人だったのですね」
「もちろんです」
「それから、あなたはどうしました?」
「私の割り当ての部屋《へや》へもどると、三十分ほど本を読んで寝《ね》てしまいました」
「なるほど……その重要な報告を持って行ったときの大賀さんの様子は?」
「やはり、問屋の倒産《とうさん》となると、こちらにもいろいろとひっかかりはありますから、大分心配しておられたようですが……前にも例がなかったことではありませんし……」
貝森憲一は、慎重《しんちよう》な態度で答えた。
5
「まるでコンニャク問答ですな」
この四人の取り眨伽Kわってから、横山部長刑事は溜息《ためいき》をついていったが、ほかの三人に対する尋問《じんもん》は、さらに手ごたえがなかった。
藤代勇は、五時ごろ、会社から帰って来た被害者《ひがいしや》に顔をあわせたのが最後だということだし、母屋《おもや》づきの女中、石原利江も、べつに変わったこともいわなかった。離《はな》れづきの女中近藤みどりは、三十八度の熱で、夕方から寝《ね》こんでしまったというし、誰《だれ》の話もぜんぜん役にはたたなかった。
ほかの三人はいちおう昨夜、離れへ行ったことは認めているのだが、肝心《かんじん》の犯行時刻と推定される午前四時前後には、みんな自分の部屋《へや》で寝ていたというばかり――もちろん、時刻が時刻だから、それも当然か知れないが、誰にも完全なアリバイはなし、かといって特にあやしむべき点もなかったのである。
殺人現場を詳細《しようさい》に眨伽ⅳ菠胯a識《かんしき》のほうからも、これというきめ手は見つからなかった。珠代にでたらめな電報を打った人物をつきとめようとする工作もうまく行かなかった。
神戸からかけつけて来た園枝夫人の話を聞いても、体に自信のある耕治は、遺言状なども作ってはいないようだった。ただ、松崎武則には、よほどむかしの恩義を感じているらしく、自分が死んでも、一生|面倒《めんどう》を見てやってくれと、日ごろからいっていたということだった。それ以外の財産はすべて園枝や子供たちに行くわけだし、松崎武則としては、好意の寄贈《きぞう》を期待するわけだったのである。
珠代がどういうことになるか、警部は疑問に思って、貝森憲一にたずねて見たのだが、この秘書は苦笑《にがわら》いして、
「いままでの例ですと、手切れ?