第 14 节
作者:团团      更新:2024-05-25 15:10      字数:4753
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  「もういうこともないようだね。幽霊は最後まで自動車を離《はな》れなかった。君が、あの実験の席で、被害者《ひがいしや》の名をよんだとき、犯人は奇妙《きみよう》な悪戯《いたずら》を思いついたのだろう。そして度胆《どぎも》をぬかれている霊媒《れいばい》にかわって、答えようという気になったのだろう。しかし、そんな心を起こさせたのは、これこそ幽霊《ゆうれい》の力だったかも知れないね」
  「そうかも知れません。しかし、最後に一つだけ、おたずねしたいことがあります。上杉さんは、本当は貞女《ていじよ》だったのでしょうか。それとも娼婦《しようふ》だったのでしょうか」
  「それは僕《ぼく》にも分からない。人間の、ことに女の本性は、法律の用語のように、わりきれるものじゃない。ただ、この事件の犯人のように、単純な、一本眨婴文肖摔证膜盲郡趣恕ⅳ饯长吮瘎·蓼欷郡韦馈S⒐卧娙摔悉工毪嗓い长趣颏い盲皮い搿?br />
  ――人の一生が偉大《いだい》であるためには、その最後が悲劇で終わらねばならない、と。
  貞女でもいい。娼婦でもいい。ただあの人は稀《まれ》に見る偉大な女優だったよ。あそこまで落ちこんだ泥沼《どろぬま》から、今日《こんにち》を築き上げた、その才能と努力とを、僕は高く評価せずにはおられないね」
  しばらくして、彼は最後の一言《ひとこと》を呟《つぶや》いた。
  「どうして近ごろの若い者は、こんな意味のない殺人などをしでかすんだろう」
  警部は、これと似た言葉を、あの自動車の中で聞いた。それは二人の殺人犯人が、自分の行為《こうい》を忘れて、お互《たが》いに相手を責める言葉であった。
  高島警部は沈黙《ちんもく》した。
  公使館の幽霊《ゆうれい》
  1
  数年前、私は『幽霊《ゆうれい》西へ行く』という小説を発表したことがある。
  くわしい内容は省略するが、その中にはこんな場面が出て来る。
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  しばらく行くと非常警戒に出っくわした。制服の警官が、車の中をあらためて、
  「お二人ですね」
  とたずねるが、捜査主任の方は
  「ああ、二人だよ」
  と答え、そのまま何事もなく通過する。
  この背広の男は、次の町で車をおりるのだが、実はこの男が犯人だったのだ。
  大したトリックとはいえないが、ここに奇妙《きみよう》な数学が成立する。
  車の中にのっていたのはあわせて三人、捜査主任と、哕炇证趣长畏溉摔胜韦馈¥趣长恧⒕伽畏饯扦稀⑦転手は数にいれず、この犯人を警視庁からやって来た男だと思って、「二人ですね」と聞いたのだ。ところが、捜査主任の方は、犯人を土地の警察署の刑事だとばかり思いこんでいるものだから、これはむこう側の人間として、数に加えず、哕炇证蓼羌婴à贫摔趣い盲郡韦扦ⅳ搿?br />
  どっちにも悪意はなかったのに、感覚と視角の相摺钉饯Δぁ筏恰⑷摔摔摔胜盲郡韦馈¥坤椤⑺饯悉长蔚谌文楔D―犯人を幽霊《ゆうれい》にたとえたのだった。
  発表当時は、ちょっと面白いトリックだなと思ったものだが、それから大分たっていることだから、私もこのことはすっかり忘れていた。だから、ある席で、枺什鞄丐胃o崎検事にあって、この話を持ち出されたときには、すっかりおどろいたものだった。
  「あのトリックにはおどろきましたよ。まったく傑作《けつさく》――六千五百万円の価値がありましたなあ」
  といわれて、私はいよいよ面くらった。物のたとえに、百万ドルの微笑《びしよう》とかいうのはあるけれども、その四分の一ぐらいの値打ちで、二十五万ドルのトリックと、冗談《じようだん》をいったつもりかと思って、しきりに頭の中で、この金額をドルに換算《かんさん》しているうちに、竜崎検事はにやりと笑って言葉をつづけた。
  「いや、なにも、あのトリックの特許料の話じゃないんです。ただ、あのトリックを実際に使った事件があったんですよ。あなたの愛読者だということですが、あの小説にヒントを得て、六千五百万円の詐欺《さぎ》を働いたんですよ。それで、私も本を買って来て読んだのですが、たしかに幽霊《ゆうれい》のトリックがたいへんうまく使ってあるんです。推理小説の害毒も、ここにきわまれりというべきですなあ」
  むこうはにやにや笑っていたが、私はいよいよ驚《おどろ》いた。ぜひ、その事件の内容を話してくれとたのみこんで、やっと、この公使館の幽霊のことを聞き出したのだが、それはたしかに、推理作家の想像を絶する奇怪《きかい》な物語だった……
  2
  国際的な問睿扦工贰F在でもまだ結審《けつしん》になっていませんから、仮名を使うことにしますが、土屋|詮三《せんぞう》という男が主犯――この人物が詐欺《さぎ》の常習犯で、あなたの小説の愛読者なんですよ。ところが、彼《かれ》はあの幽霊《ゆうれい》のアイデアを見たときに、これあるかなと膝《ひざ》をたたいて感心したのです。それから、彼は自分の仲間の勝田省吉という男と一緒《いつしよ》になって、いろいろと幽霊を出すのにふさわしい場所を探《さが》してまわったのです。そして、発見したのが、M国の公使館でした。
  M――という国の名前も、はっきりいえませんけれども、中米にある一つの小国だと思って下さい。その言葉はスペイン語ですが、これが大いに役だったのです。英語やドイツ語、フランス語などではいけなかったのですねえ。
  スペイン語を話せるのは、公使とその家族だけ、ほかの館員は、日本語しか話せません。両方の言葉を使えるのは公使の秘書の二世ひとりで――ドン?山下というような名前にしておきましょうか。
  二人はまず、このドン?山下をだきこみました。大芝居《おおしばい》を打つためには、少しぐらいの資本投下はがまんしなければいけないから、まず公使館で輸入する免税《めんぜい》の洋酒を少し分けてもらえないかというような名目で、ドンに接近し、飲ませたり、女を世話したり、金をつかませたりしながら、むこうの態度を観察したのですね。それで、これは物になりそうだとにらんでから、儲《もう》けた金の何割かを分けてやるという約束《やくそく》で、とうとう仲間にすることに成功したのです。
  ドンの方は、この大芝居がすんだらすぐに本国へ高とびするということになっていました。なにしろ、外交官のことですから、旅券はいつでも自由になりますからね。
  さあ、これからがいよいよ、幽霊の登場ですよ。ドンは、それから勝田省吉を公使館へ連れて行き公使に紹介《しようかい》しました。
  もっとも、むこうは日本語はわからない、こっちはスペイン語がわからないと来ているから、これはドンの一人|舞台《ぶたい》です。
  公使には、自分の友人だが、ちょうど公使館へ撸Г婴死搐郡榻B介しましょうと持ちかけて、それから公使館の全員には、勝田君にはこれから自分の助手をつとめてもらうことになったから――と紹介したのですね。
  公使の方は、館外のただの日本人だと思っている。館員の方は、正式に館員となったものとばかり思いこんでいるものだから、たとえば、外部から電話がかかって来て、
  ――勝田さんというお方は、そちらにおつとめですか?
  というような問いあわせがあったとしても、
  ――はあ、たしかにおつとめになっていますが、今日はおでかけでございます。
  という風な返事をするでしょう。何しろ、交換手《こうかんしゆ》から小使に至るまで、一人のこらず、正式に秘書の助手になったとばかり、思いこんでいるのですから、絶対にぼろが出る気づかいはありませんねえ。たとえば、名刺《めいし》を作るにしても、公使館から電話をかけて、現品を公使館へとどけるんですから、こんなことで足がつく気づかいもありませんよ。
  公使の方も、友人にしては、ずいぶん足しげく撸Г婴死搐毪狮D―と思ったかも知れませんが、勝田省吉のほうも、そこはぬけめなく、公使にいろいろの物を贈《おく》って、しきりにきげんをとっていたんですよ。
  公使にしたところで、金には不自由はないとしても、やっぱり遠い異国に来ていて、外国人から親切にしてもらえば、そこは人情としてうれしいでしょう。勝田省吉が来るたびに、にこにこして話しあっているものだから、それを見ている館員たちの方は、完全にだまされてしまったのも無理はありません。こういう風にして、M公使館の幽霊《ゆうれい》は、みごとに誕生《たんじよう》したわけですよ……
  3
  さて、これからがいよいよ、本筋のお芝居《しばい》です。数か月にわたって、公使と館員をぶじにだましおわせた勝田省吉とドンは、いよいよ、外部への工作にかかったのですね。ちょうど、時はデフレの真最中で、相当の大会社でも、金ぐりには青息|吐息《といき》の状態だったとお考え下さい。
  そういう時に、会社の方では、まず約束《やくそく》手形を振り出して、これを現金にかえ、急場をしのごうとするものですよ。約束手形といいますと、早くいえば借金の証文のようなものです。三か月なら三か月先に、これだけの金をわたすという約束で、手形に金額を書きこんで、むこうにわたすわけですよ。たとえば物を買って、その支払《しはら》いにあてるというような目的に使うのが、本来の性伲胜韦扦工ⅳ长Δい鹑凇钉螭妞Α筏耸工rには、その間の利子をさしひいて、現金をうけとるわけですね。これを俗に『手形を割る』といいますが――いや、あなたのようなお方をつかまえて、こんなに細かなところまで、お話しする必要はありませんでしたかな。
  ところが、手形というものは、期限が来るまでは、ぐるぐるいろんな人の手をまわって、有価証券としての性伲虺证盲皮い毪猡韦扦埂¥坤椤ⅳ辘摔长问中韦蛟p欺《さぎ》で持って行かれたとしても、これが善意の第三者の手にわたれば、振《ふ》り出《だ》した側では、みすみす詐欺と知りながら、約束の金額を支払わなければならない羽目になるわけですよ。普通《ふつう》には、これをパクリといっていますがね……
  ところで、ドンと勝田の二人は、やっと適当なパクリの相手を探《さが》し出しました。これも会社の名前はちょっと出せませんから、かりに、丸々商事株式会社と呼んでおきましょうか。
  まず、勝田省吉は、自分の仲間をつかって、丸々商事の重役と連絡《れんらく》をとったのですよ。
  なにしろ、パクリ詐欺というのは、戦後の流行犯罪ですから、ちょっとやそっとの方法では一応の会社の重役なら、ひっかかる気づかいはまずありません。ところが、いやしくも一国の公使館ということにもなれば、これは必ず膝《ひざ》をのり出して来るでしょう。相手が日本人となると信用しなくても、外国人となると、無条件に信用してしまうのが、日本人の悪癖《あくへき》でしてね。
  話というのは、こんな工合だったのです。
  まず、一国の公使館だから、円の工面《くめん》はつかなくても、ドルだったら、くさるほどあると持ちかけました。M国は領土こそ小さいけれども、経済の豊かなことにかけては定?